ファミリーマートの挑戦

未来を見通すことは難しい。
しかも、まだ足を踏み入れたことのない場所で起きる、人間の気まぐれな行動を予見することなど、不可能だと思う方が普通だ。



お昼になって昼食を取ることも、暑い日に飲み物を欲しくなることも、人間だったら当たり前。しかし、街にはお店があふれている。

道路を渡ってまでは行きたくない。それでも、お気に入りの商品があれば行くのかもしれない。とはいえ忙しい日は、そんなことも言ってられない。

つまり人が何か行動を起こす背景には、数多くの要因が絡んでいる。そして、それぞれの要因は、結果との単純な相関関係にあるわけではない。驚くほど沢山の要因が、デリケートに絡み合いながら、何かしらの行動に帰結しているのだと言える。


画像を見せて、写っているものを判定する機械学習のコンテストがある。これまで様々な手法が試されてきたが、今は深層学習にかなうものがない状態になってきた。

例えば犬の写真を見せて犬だと判断するということは、柴犬を見せても、プードルを見せても犬だと判断できるということだ。もちろん全身が写っているものもあるし、体の一部だけかもしれない。

つまり判定する写真と犬との関係は、そんなに単純ではなく、犬と人間だけが呼んでいる生物に共通している特徴を、人間が教えること無く、コンピュータが計算によって捉え、正確に判断する。

こうした深層学習の特徴を、販売数や売上の予測に使ったら?


ぼくたちがMAGELLAN BLOCKSという機械学習サービスを始めた入り口は、このあたりにあった。

売上の予測というと、もちろん数多くの統計的手法がある。しかしそういう手法を駆使するには、統計に関する知識が必要だ。

一方、深層学習で犬を見分けるには、機械学習に犬の写真を何枚も見せてあげるだけ。それだけで、どういう特徴があると犬だと言っているのかを、機械学習が計算によって割り出す。つまり、特徴に関するヒントを与えないで良い。

これは上手くすれば、例えばある日の売上と、その日の売上に関連する因子を見せてあげることで、何もヒントを与えなくても正確に未来の売上を予測できるのではないか。

しかも深層学習なので、それぞれの因子がデリケートに絡み合い、因子の数が極めて多い。つまり、超多変量で、非線形なできごとの特徴を正確に掴み、予測する。そういうことができるのではないか。

様々な機械学習機能を搭載している「MAGELLAN BLOCKS」の一つを、そうしたことに特化させてリリース。今では多くのお客様に利用していただいている。

そして、これまで数多くの事例、数多くの実績を積み重ね、ぼくたちの予見は正しかったと断言できる。

お店の売上や、商品の売れ行き、コールセンターにかかってくる電話の数、来店者数、広告効果予測、公立高校合格点数予測。様々な課題に対して、極めて高い精度で結果を出している。

しかも、そういうAIを完成させるために、ぼくたちは使い方を伝えているだけ。利用する企業が、自力で適切な因子を選択し、BLOCKSに見せる。それだけで適切な学習を行い、未来を予測しはじめる。

そして、そういう取り組みの中でもとりわけ画期的な、ファミリーマートさんの事例が、先日発表された。

他のコンビニと一緒に掲載されたが、間違えてはいけないのは、ファミリーマートは、ぼくたちに依頼することなく、BLOCKSを使って自力でAIによる予測を完成させたことだ。

外部の誰にも依頼していないので、これからも様々な取り組みを自力で計画し、実現させることができる。


しかも単純な販売数の予測ではなく、これまでお店を出したことのない場所に出店したら、初年度の売上がどうなるかを正確に予測したのだ。

ファミマはコンビニの新規出店の可否判断にAIを導入した。グーグルと組み、データ分析のスタートアップ企業、グルーヴノーツ(福岡市)のAIサービスを使う。出店候補地の商圏内の年代別の世帯数や人口、競合する小売りの出店状況などを踏まえて、出店した場合の売上高を予測する。
 AIに10~16年に出店した3500店の商圏データと実際の売上高を学習させた。ファミマではこれまで売上高と関係の深いと思われる指標を15程度選んで売上高を予測していた。AIは600項目を計算して店舗の売上高を予測する。
 これまで1日の売上高の予測と実績の差が5万円以内に収まったケースは4割弱だった。AIを利用すると8割弱が5万円以内の誤差に収まったという。精度の高い売り上げ予測が可能となるとみて、人口減などにより出店先が絞られる中で効率的な出店につなげる。   (日本経済新聞 2018/7/1)

未来は、激しく現実になっている。
機械学習は、さらに民主化していくだろう。

特別なことなど何もない。
情熱の強い順に、未来を掴んでいるだけだ。

コメント