Amazon goが実現しているもの

以前から、GooDayの柳瀬社長と「店舗を無人化」することについてディスカッションをしていた。「無人」というところばかりが話題になっていることについて違和感があったからだ。それならば、やっぱりAmazon goだろうということで、今回の出張に合わせて一緒に訪問してきた。


結論としては、やっぱり見なければわからない。
すばらしく良くできている。

まずお店の立地だけど、ビジネス街の中。オフィスビルの一階にある。
なので、対象はビジネスマン。
朝、通勤前に立ち寄るか、お昼に昼食を買うか、帰りに寄るか。

店舗内は、お洒落な雰囲気。しかも機能性だけの日本の店舗と比べると、店舗全体がバランス良くデザインされているせいなのか居心地が良い。

商品としては、サンドウィッチやサラダなどを中心とした食品と飲料、お菓子、お酒など。

特にサラダやサンドウィッチなどは、とても鮮度が高く、回転の良さと発注精度の高さが想定される。


特筆すべきは、「行列がない」という点だ。
「無人」という言葉に関心が集まりすぎているけれど、鍵はこの「行列がない」ということ。

どういうことかというと、Amazon goでは、棚から商品をとって、持って帰る。それだけ。(つまりpick & go。このあたりが名前の由来なのかと。)
それだけで、誰がどの商品を買ったかを、自動的に検知して、お金の引き落としも自動で行われる。つまり行列するところが無いのだ。

日本でも、昼時のビジネス街コンビニは、うんざりするほど長い列が並んでいる。忙しい時は、コンビニで済ませたいと思っていても、あの長い列であきらめてしまうことが多い。しかもここはアメリカだ。日本よりも質の高いレジ対応を実現できるとは思えないので、行列を作ってしまうレジが無いというのはとても快適だ。

だからこそ、現場で支払いをさせないというのが、とても重要だと思える。日本のコンビニでも、1円単位までキッチリ払おうと小銭をゴソゴソ探している人がいると、本当にうんざりする。別の例になるけれど、Uberが快適なのも、タクシーが本当に妥当な金額を請求しているのか心配しないでいいからだとも言える。

つまり支払いを切り離すと。もう少し言うなら、サービスの現場から決済という行為を無くすと、すこぶる快適になるものがある。これはぼく自身にとっても、かなり重要な気づきだった。

だからこそAmazon goの本質は、「無人」というところにあるのではなく、「行例がない」というところにある。そのために、現場で決済させない。それを徹底的に実現したのだと言える。

つまり「提供者側の省力化」ではなく、「顧客の利便性」に力点が置かれているのだ。

一方、こうしたことを実現しているITはどうなっているのか。

AmazonGoの仕組みについては、Amazonから公表されているものは無いので、想定で考えるしか無い。

店舗内の仕組みを見ていると、思ったよりカメラらしきものが少ない。
そして思ったより目につく「機械」が少ないと言う点。

しかも顧客動線を追いかけている「カメラをベースとしたデバイス」らしきものは、天井に設置されているだけ。

これはシステム的に見るとすごく重要な点だ。

人の位置をトレースしようとすると、上から撮るのが一番いい。そうすると個人を特徴づけるもの、顔や体型や服装などは、ほとんど映らない。なのでカメラ位置を真上にすると、自然と方針が決まってくる。

実際、同じような仕組みを深層学習などを使って実現したことがある。その経験で言うと、この仕組では単純な深層学習モデルだけで個人を追いかけるのは無理だ。

ということは、入り口の入店タイミングから、もっと単純な方法を組み合わせて。つまり、画像と、それに付随する情報などから、個人を追跡し続けているのだろう。見る限りレンズの大きさに対して天井に設置されているデバイスが大きいので、幾つかのセンサーを組み合わせて、人の移動を追いかけているのか。そうでなければ、ある程度エッジ側で処理する構造になっているのか。

一方棚なんだけど、ここには幾つかの仕掛けがあるように見えた。

一つは棚に伸ばした手を追いかけられそうな場所につけられたカメラかセンサーらしきデバイス。それに棚の裏に設置されているデバイス。これはおそらく重量などを計測しているのだと思う。

このあたりを組み合わせれば、棚の「どの位置にいた人」が「どの商品」を「何個取ったのか」、もしくは「何個返したのか」がわかる。

サラダのような商品ごとに重さが違うようなものについては、前の商品をとると、後ろを押し出すような機構になっているので、どのくらい押し出せているのかで何個取られたのかわかるはずだ。

つまり全般的には、
1.入店から特定の人が店内のどこにいるのかを追跡する仕組み。
2.商品に手を伸ばしたかどうかを検知する仕組み。
3.どの商品が何個取られたのか、または何個返されたのかを検知する仕組み。
おおまかに言うと、この3つで構成されているのだと思う。

こうやって考えていくと、みんなが言っているような超最先端なAI技術を駆使してというよりも、割とこなれた昔ながらの技術を駆使しつつ、一部AI的アプローチをとっていると想定される。

画像だけでやっているようなことを言っている人がいたけど、そうでないのは確かで、「AIを駆使して」というほどでもなく、なるほどなと思った。

また買い物をした商品に関する結果が集計されるのが、お店を出て1時間くらいたってからなのも、頑張りすぎていない感じがして、すごく好印象。

技術って、頑張って最高を追求しすぎるとそのためにコストが馬鹿みたいに跳ね上がることがある。だから、適当な範囲で押さえておくことが必要。このあたりのさじ加減がうまい具合にできてそうだと思えた。

いずれにしても、非常に良く工夫された仕組みで、徹底的に検証を繰り返した印象を受けた。

合理化のための無人ではなく、サービス品質向上のためのものであり。
誰にも真似できないような超最先端だけを駆使したわけではなく、使い古された技術も利用しながら、徹底的に検証して精度をあげていった。そういう仕組みだろう。

そして肝心の決済システムについては、これまでのAmazonの仕組みそのまま。

そうやって考えてみると、Amazonじゃなければできないことは何もない。

しかし、ハードウェアを売りたかったり、受託開発を仕事にしている人たちに任せていたらできない仕組みであることは確かだ。道具よりも、目的のために最適化された手段で、徹底的に検証をして仕上げていく。

そして何よりも、ベンダー任せにしないで自分たちで考え、自分たちで検証していく。
その姿勢は、日本の小売りも見習うべき点だと思う。

できるだけシンプルな仕組みで。ハイテクであればいいわけではなく。
そういう構造で、実践を積み重ねる。

店舗の内装も、陳列も、システムも、よくデザインされている。

機械やシステムや道具を店舗に組み込んでいくという発想ではなく、シンプルなゴールに向けて、できるだけシンプルにデザインしていく。そのために店舗の物理的な設計も、おそらく内装も(床の模様は結構重要)、ゴールに合わせて設計したのだと思う。
ゴールから逆算して、ベストな姿を探していく。ここら辺が、大いに見習うべき点だ。

日本人は、とかく「せっかくだからこんなことも」と、ベターな道に走りがちだ。
ベターを選択する人は、ベストを見失うのだ。

そして、ベストを選択したからこそ、次のAmazon goを出店するときは、今より遙かに安いコストで実現できるだろう。

ちなみにこの店舗の弱点は、入店している人が多すぎたら機能しなくなる点だ。
だから入り口で、人が入場制限しなければならない。

だから、無人店舗じゃなくて、行列ができない店舗。
コスト削減を目指した店舗じゃなくて、サービス品質向上を目指した店舗。

やっぱり人の意見を鵜呑みにしないで、見てみないとわからないね。

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